相続・遺言
相続の概要
- 人が死亡したとき、一定の人がその財産を引継ぐ制度。
- 死亡した人を「被相続人」、財産を引継ぐ人を「相続人」と呼ぶ。
- 相続は被相続人の死亡によって開始する。
‐相続では被相続人の意思を尊重し、遺言があれば、遺言に従って相続が行われる事を基本としている。
(無ければ法律(民法)の定めに従う。)
‐相続人全員が納得すれば相続財産の分け方は自由。
法定相続人
相続人 | 法定相続分 | |
---|---|---|
第一順位 | 配偶者・ | 2分の1 |
第一順位 | 子 | 2分の1 |
第二順位 | 配偶者・ | 3分の2 |
第二順位 | 直系尊属 | 3分の1 |
第三順位 | 配偶者 | 4分の3 |
第三順位 | 兄弟姉妹 | 4分の1 |
- 内縁の妻(夫)、子の妻(夫)等は相続人とはなりません。
- 子の中に被相続人より先になくなっている者がいる場合、その子(孫)が代わりに相続人となります。これを「代襲相続」と呼びます。
特別受益者の制度
兄弟のうち1人だけが前に被相続人より住宅を買ってもらっていた場合など、法定相続分どおりに財産を分けると不公平が生じてしまうことがあり、この不公平をなくす方法を特別受益者の制度といいます。
寄与分制度
- 親の面倒を見た子供とそうでない子供の相続分が同じでは不公平になります。
- 親に貢献した子供の相続額を増やそうというのが寄与分制度です。
- 寄与分の額は、相続人同士の協議で決定します。
しかし、協議がまとまらない場合等は寄与者の請求で家庭裁判所が決定します。
法定相続人であっても相続できない人がいます。
相続欠格
民法に規定されており、遺言があったとしても認められません。
- 被相続人を殺害・殺害未遂した場合。
- 被相続人が殺害された事を知っていて黙っていた場合。
- 遺言する際、詐欺・脅迫をした場合。
- 遺言書を偽造したり、隠した場合
相続排除
家庭裁判所に申し立てます(遺言で行う事も可能)
- 相続人が被相続人を虐待した場合。
- 相続人が被相続人に重大な侮辱を与えた場合。
- 著しい非行が相続人にあった場合。
相続の承認および放棄
相続人は相続の開始があった事を知った時から3ヶ月以内に相続について単純・限定の承認または、放棄をしなければなりません。
単純承認
無限に被相続人の財産を承継する(財産も借金も)
限定承認
- 被相続人の財産も借金も一応引継ぐが、相続した財産の範囲でしか借金の責任を負わないと家庭裁判所に申し出る事。
- 複数人相続人がいる場合は全員で共同して行います。
相続の放棄
- 被相続人に多額の借金等がある場合相続人にはその相続を放棄する権利があります。
- 家庭裁判所に申述が必要です。
- 相続を放棄した場合は、初めから相続人でなかったものとして扱われます。
遺言とは・・・
遺言者が、自分の死後の法律関係(財産、身分)を一定の方式に従って定める最終的な意思表示。
簡単に言えば、自分が死んだ後に、「財産を誰々に残す」とか「実は隠し子がいた」など相続人・その他の人へ伝えたい事を死ぬ前に残しておくこと。
- 遺言の方式は法律で定められているので、違反すると無効。
- 死ぬ前であればいつでも自由に変更する事が可能。
但し、法律上の方式を守らなければいけません。 - 遺言で定める事ができる内容も法律で決まっている。
- 15歳以上は遺言をする事ができます。
- 遺言により財産を引継がせることを「遺贈」という。
法律は相続に対して法定の相続分の割合を決めているだけです。
遺言書で、誰がどの財産を相続するかを決められるので、相続人同士の争いを防ぐ事ができます。
遺言書には大きく2つの種類があります。
【普通方式の遺言】
一般的なのは普通方式です。普通方式はさらに3つに分類されます。
- 自筆証書遺言・・・自分自身で書く遺言書。
- 公正証書遺言・・・公証人役場で公証人に書いてもらう。
- 秘密証書遺言・・・自分で遺言を作成し、公証人役場で自分自身の遺言であることを告げ公証人に 証明をしてもらう。
【特別方式の遺言】
臨終の際、筆記できない状況下で口頭で遺言する危急時遺言や、映画等であるような船の遭難時に行う船舶遭難者遺言がありますが、あまり一般的ではありません。
◆普通方式の遺言の種類
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
■作成方法
自筆証書遺言
- 自分で書き、氏名・日付を記入し、押印する。
公正証書遺言
- 本人と立会人が公証役場へ行き作成してもらう。
秘密証書遺言
- 本人記入後、封筒に入れ封をして公証役場で証明してもらう。(ワープロ・代筆可。但し署名は自署)
■証人
自筆証書遺言
- 不要
公正証書遺言
- 証人2人以上
秘密証書遺言
- 公証人1人・証人2人以上
■遺言書の保管
自筆証書遺言
- 遺言者が保管
公正証書遺言
- 原本は公証役場
- 遺言者には正本と謄本(コピー)が交付される。
秘密証書遺言
- 遺言者が保管
■印鑑
自筆証書遺言
- 実印(認印可)
公正証書遺言
- 本人の実印・証人の実印または認印
秘密証書遺言
- 本人が遺言書に押印したものと同じ印で封印
■家庭裁判所の検認
自筆証書遺言
- 必要
公正証書遺言
- 不要
秘密証書遺言
- 必要
◆長所
自筆証書遺言
- 簡単にできる。
- 遺言内容を秘密にできる。
公正証書遺言
- 保管の心配が要らない。
- 遺言の存在と内容が明確。
- 変造・紛失の恐れがない。
- 無効になる恐れもなく、最も安全。
- 自筆できない人も可能。
秘密証書遺言
- 遺言の存在を明確にできる。
- 遺言内容を秘密にできる。
- 署名・押印できれば自筆できない人も作成できる。
◆短所
自筆証書遺言
- 変造・紛失の恐れがある。
- 遺言書が発見されない恐れがある。
- 要件の不備により無効、内容の曖昧さにより紛争の恐れがある。
公正証書遺言
- 秘密が保てない。
- 手続きが面倒。
- 若干の費用がかかる。
秘密証書遺言
- 変造・紛失の恐れがある。
- 遺言書が発見されない恐れがある。
- 要件の不備による無効、内容の曖昧さにより紛争の恐れがある。
- 若干の費用がかかる。
遺言があるときの相続
- 遺言によって、財産を他人に与える事ができます。
- 遺言は亡くなった後に効力を生じます。
- 相続人に秘密で、生前に自分の財産の処分をどうするかを自由にできるのが遺言です。
- 遺言によって決められた相続分を「指定相続分」といいます。遺言によって法定相続分とは異なった相続が可能になります。
しかし・・・
相続人には財産承継の権利である「遺留分」が 認められています。
遺留分とは・・・
被相続人がどのように財産を処分しようとしても自由ですが、その遺産をほとんど相続人以外の人が相続してしまうと、相続人の生活の安定が損なわれる場合もあります。
民法では一定範囲の相続人に一定割合の相続財産を相続できるように「遺留分制度」を設けています。
遺留分の割合
被相続人がどのように財産を処分しようとしても自由ですが、その遺産をほとんど相続人以外の人が相続してしまうと、相続人の生活の安定が損なわれる場合もあります。
民法では一定範囲の相続人に一定割合の相続財産を相続できるように「遺留分制度」を設けています。
遺留分の対象者 | 遺留分の割合 | |
---|---|---|
配偶者 | 法定相続分の2分の1 | |
直系卑属(子・孫) | 法定相続分の2分の1 | |
直系尊属(父母・祖父母) | 法定相続分の3分の1 |
※兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺言書に書くべき内容
- 遺言書の内容で法的拘束力があるのは、相続分の指定や遺産分割方法など10項目です。これら以外の項目に関しては、書いてあっても守る必要はありません。
遺言書で法的に有効とされているのは次のとおりです。
①相続分の指定
②遺産分割方法の指定
③遺贈
④祭祀継承者の指定
⑤認知
⑥指定相続人の廃除
⑦遺言執行者の指定
⑧生命保険受取人の指定・変更
⑨信託の設定
⑩財団法人の設立
しかし、遺言書に事務的な事ばかりではなく、家族に対する気持ちや、趣味の写真等の整理や処分方法等を伝えるのも遺言を見た遺族にとっては慰めとなる事もありますので、伝えたい事があるなら書いておくこともお勧めです。
遺言作成時の注意点
- 遺言書は、民法に定める方式に従わなければ効力を失います。
- 2人以上の者が同一の証書で遺言をする事はできません。
(共同遺言の禁止) - 自筆証書遺言では日付の記載は遺言書の有効・無効の判断材料となります。
(○月吉日は無効) - 曖昧な表現はトラブルのもとです。 (不動産所在地が不明確、預金口座が明記なし、人名は戸籍謄本どおり
遺言書を作成することをお勧めするケース
法定相続分と異なる配分をしたい場合
- 相続人それぞれの生活状況などに考慮した財産配分を指定できる。
相続人の人数・遺産の種類・数量が多い場合
- 誰が何を取得するかについて明確にしておけば紛争防止になる。
配偶者と兄弟姉妹が相続人なる場合
- 配偶者と義理の兄弟姉妹との協議はなかなか円満には進まないときもあるといわれます。
- 兄弟姉妹には遺留分がないので配偶者に全財産を相続させることが可能。
農家や個人事業主の場合
- 相続によって事業用資産が分散することを防止できる。
相続人以外に財産を与えたい場合
- 遺言書がなければ不可能。
相続手続きの流れ
①被相続人の死亡(相続の開始)
②死亡届の提出・・・7日以内
③遺言書※の有無の確認
有→遺言書に従う
無→法定相続
④相続財産の調査・評価、相続人の確定※
⑤相続放棄・単純、限定承認の手続き・・・3ヶ月以内
⑥遺産分割協議、および協議書作成※
- まとまれば→相続財産の分配・名義変更の手続き
- まとまらない・協議ができない→家庭裁判所に申し立て(調停・審判)
※遺産分割に関して、期限の定めはありませんが、分割せずに長く放置しておくと、相続関係が複 雑になるおそれがあります。
⑦準確定申告・・・4ヶ月以内(死亡した方の確定申告)
⑧相続税申告・納税・・・10ヶ月以内